「不動産の購入には融資を使わないといけないの?」
「融資を受けることのリスクは??」
こんな悩みを抱えてはいませんか?
不動産投資では融資を活用することが拡大のカギを握ります。しかし融資イコール借金、ということで借金を増やしつつ物件を買い進めていくことに不安を抱いている方も少なくないのではないかと思います。
しかし、結論から言うと「使い方を間違えなければ融資は怖くない」と自信を持って言えます。
この記事では、融資を使って規模拡大中の現役サラリーマン大家が、不動産投資において融資を活用することのメリットやデメリット、さらに危険な融資の見極め方などについても解説します。
融資について理解を深めるための参考になれば幸いです。
不動産投資に融資を活用するメリット
不動産投資で大きく資産を拡大し成功するためには融資の活用は欠かせないと言っても過言ではありません。具体的には以下のようなメリットが期待できるからです。
- レバレッジ効果
- キャッシュフローの向上
- 資産ポートフォリオの拡充とリスク分散
- 税制上の優遇措置
- 手持ち資金の確保
以下詳しく解説していきます(今回は物件購入時の諸費用や税金は考慮せずに議論します)。
レバレッジ効果
レバレッジとはてこの原理のことです。つまり今持っている資産を活用し、その何倍もの価値がある不動産を取得することができるという状況を言い表しています。自己資金のみで不動産を購入するよりも大きな物件を取得できるため、投資元本の相対的な収益が増加し、収益率を向上させることが期待できます。
例えば現金1000万円を持っている人が、融資を使わずに1000万円の物件を購入した場合と、融資を受けて1億円の物件を購入した場合で比較してみましょう。この場合、例えば不動産価格が一律で30%上昇した時の利益はどうなるでしょうか?現金購入の際は1000万円の30%なので300万円ですが、融資を活用していると1億円の30%は3000万円になります。考えるまでもなく融資を使って扱う物件の額を高めた方が利益が伸びます。このように、同じ手持ち資金から利益を何倍にもブーストできるカギを握るのが「融資によるレバレッジ効果」です。
キャッシュフローの向上
①と関連して、融資を受けてより多くの、またより高額の不動産を所有することで月々の家賃収入(キャッシュフロー: CF)を増やせる点も融資を活用する大きなメリットの一つです。先ほどと同様に、1000万円あるいは1億円の物件(ともに利回りは10%)を購入した場合のCFをそれぞれ計算して比較してみましょう。
融資なしの場合
融資なしで1000万円の物件を取得した場合、その収入は1000万円かける10%で100万円になります。実際は税金や修繕費などの運営経費が家賃収入の20%程度掛かったとして、1か月あたりの収入を計算すると6.7万円となります。
1000万円×10%=100万円(年間家賃収入)
100万円×20%=20万円(年間経費)
80万円÷12か月=6.7万円(月々の収入)
融資を活用する場合
融資を活用し1億円の物件を購入したとすると、その収入は1億円×10%で1000万円になります。先ほどと同様に運営経費が家賃収入の20%程度掛かったとすると、1か月あたりの収入はおよそ67万円になります。融資を活用している場合はここから返済分を考慮する必要があります。融資条件が9000万円(物件価格1億円マイナス自己資金1000万円)、金利2%、期間20年、という条件だったとすると、返済額は月額46万円となります。
次の手残りは約21万円、この物件だけで新卒のサラリーマンぐらいの収入を手にすることができました(しつこいようですが税金などを細かく計算すると数値は変わってきます)。
このように、融資を活用することでCFが大きく改善します。お金がたまるスピードが上がるのでその後の拡大のスピードにも差が出てきます。融資を活用することは「時間を買う」ことにも繋がると言えるでしょう。
資産ポートフォリオの拡充とリスク分散
ポートフォリオとは、資産の内容、種類の組み合わせのことを指します。融資を活用することで、同じ手持ち資金からより多くの不動産を取得することができる、というのは既に説明したとおりです。さらに融資を活用して保有する物件の種類を増やすこともリスク分散になることを強調しておきます。
投資のリスク管理については「同じかごに卵を入れるな」という表現が用いられます。卵を別々のかごに入れて保管しておくことで、一つのかごが落ちても割れる卵は一部だけという状況を作ることができ、不測の事態に強い資産形成につながるというものです。
不動産投資になぞらえて考えてみましょう。1000万円で区分マンションを1戸購入したとします。入居者がいる場合はいいですが、ひとたび退去になってしまうと家賃収入は入りません。3000万円の融資を受けて1000万円の区分マンションを4戸保有する方が、1戸あたりの退去による家賃収入の低下を25%に抑えることができるので、よりリスクが分散されていると考えられるでしょう。
また、先ほどの場合、同じマンション内の4戸を保有することはリスク分散の観点から良い投資だと言えるでしょうか?何かの要因でそのマンションの賃貸需要が低下してしまった場合、持っている全物件の価値がまとめて下がってしまうことになりかねません。保有物件の地域を変える、また区分マンションとアパートなど異なる種類の不動産を組み合わせることで、リスクを分散し、より安定した収益が期待できるでしょう。
税制上の優遇措置
不動産投資は税金との戦いです。物件購入において、支払った利子や融資にかかる経費は一般的に経費として控除が可能です。本記事では不動産投資に係る税金の詳しい説明は割愛しておりますが、返済の利息は経費になるため実質的な税負担が軽減します。課税対象の所得を減少させ、税金の節約につながります。
手持ち資金の確保
融資を利用して物件を購入することで、手持ち資金を確保しつつ規模を拡大することができるのも大きなメリットです。1000万円の物件を全額現金で購入すれば手持ちの現金が1000万円減りますが、融資によって頭金10%に抑えることができれば、全額現金で購入する場合と比較して900万円多く手元に残すことができます。不動産投資では退去に伴う修繕や設備の故障などの突発的な出費が避けられないため、手持ちの現金を確保しておくことは健全な賃貸経営に繋がります。
不動産投資に融資を活用するリスク・デメリット
不動産投資に融資を活用する際には、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。
- 金利負担がCFに影響する
- 家賃収入の低下で返済が滞る
- 不動産価格の低下で売却できない
- 借り入れ条件が変更される
多くのデメリットはメリットの裏返しになりますが、正確に理解しておくことが大切です。以下に解説します。
金利負担がCFに影響する
融資は毎月返済していかなければならず、返済期間中に発生する金利負担が増加します。先ほどのシミュレーションでは、融資を受けて10倍の価格の物件を購入しても家賃収入の手取りは10倍にはなっていませんでした。この理由の一つが金利の負担です。利率が高ければ高いほど利息が高くなるのは当然ですが、それよりも融資期間(返済期間)を伸ばすことによって多くの金利を払うことになるため、融資計画は慎重に組み立てる必要があります。
家賃収入の低下で返済が滞る
融資の返済は最初の金銭消費貸借契約に基づき毎月実施されます。不動産賃貸業では退去の発生など収益を下振れさせる要因はたくさんありますが、その場合でも基本的に返済は待ってくれません。不動産市場の変動や予期せぬ出来事により、賃料収入が予想よりも低下する場合、返済に支障が生じる可能性があります。返済リスクの管理が不十分だと、ローンの返済ができなくなり、物件を差し押さえられるなどのリスクも考えられます。
不動産価格の低下で売却できない
不動産市場は変動が激しく、投資物件の価値は減少する可能性があることを頭に入れておかなくてはいけません。融資を受けている途中で物件を手放す場合、その売却で得たお金で残りのローン(残債)を一括返済する必要があるのですが、不動産の価値が下がって残債の額以上で売れない場合、足りない金額は自己資金から一括で補填しなければいけません。
つまり、ローンの残債が5000万円ある状態で物件が4000万円が売れなかった場合、「とりあえず先に物件を売却して4000万円を返済し、残りの1000万円の返済は給料から返すなど後から対応する」ことはできません。基本的に抵当権者である銀行からは「売却時に自己資金を捻出してでも一括で5000万円を返済する」ことを求められます。
「残債額以下でもいいから売却したい状況」というのは、基本的に賃貸経営があまり上手くいっていない状況だと思われます。しかしそんな状況では物件を売却して手仕舞いにすることすら難しくなります。融資を受けて投資した場合、市場の変動を常に意識しておかなければいけません。
借り入れ条件が変更される
金融機関は市場状況や経済状態によって借り入れ条件を変更することがあります。特に今は史上稀にみる低金利時代。今後金利が上がることはあっても下がることはないでしょう。不動産投資に関連する融資は多くが変動金利なので、返済期間中の金利の変動や上昇がおこると返済総額が増加し、投資収益が減少する可能性があります。金利の引き上げや融資の制約が発生すると、追加の負担や事業計画の見直しが必要となります。
会社員が不動産投資で融資を活用する際に特に気を付けること
不動産投資における融資はまさに諸刃の剣です。上手く活用すれば規模拡大のために大きく働いてくれる一方、そのレバレッジ効果が負に働く可能性もあります。ここでは、これから物件購入を進めていきたいと考えている方が融資を活用する際に気を付けなければいけない点を解説します。いずれも絶対に避けなければならないということではありませんが、リスクが高い借り方だなということを分かった上で進めるようにしましょう。
返済比率は50%以下を目安にする
家賃収入に対する返済額(元本+利息)の割合を返済比率と呼んでいます。返済比率は50%を超えないことを一つの目安にしましょう。返済額は頭金を多く入れたり融資期間を長く設定することで減らすことができるので、融資を組む際に考慮すべきポイントです。
一方で、何が何でも返済比率を下げようと思って頭金をとにかく突っ込む、というのも得策ではない場合があります。不動産投資では退去や突発的な修繕などのために現金をある程度保有しておくことが必須となります。頭金のために手持ちの現金を減らすことも賃貸経営においてはマイナスなので、バランスを考える必要があります。
高値掴み+アパートローン
会社員がワンルームマンションやアパートを融資を使って購入する際に特に気を付けなければいけません。不動産の価格は売主と買主が合意することで決まり、定価というものはありません。しかし担保価値の算定方法や地域、物件のスペックによる相場というものは存在します。
基本的に金融機関は、不動産の担保価値に相当する額の融資しか出しません。担保価値が8000万円の物件に対して1億円の融資をすれば、差し引き2000万円は銀行が丸々リスクを被ることになり、銀行は普通そのような判断をしないからです。しかし会社員が不動産投資をする場合、「物件価値だけ見ると2000万円足りないけど、この人は年収が1000万円あるからいざとなったら給料から返済できそうだな」と見積もられます。これがサラリーマンとしての与信になります。
サラリーマンとしての与信を活用して融資を受けることが一概に悪いことではありません。悪いのは、融資が出るからOKだと思って市場価値と大きく乖離した高値で物件を購入してしまうことです。高値で購入してしまうと、将来的に残債より高い値段での売却が難しくなってしまうからです。とはいえ相場より割安な物件を探し続けていても素人が購入することは難しいでしょう。相場より少し高いぐらいの価格になってしまうことはある程度受け入れつつも、その後の売却などを含めたシミュレーションが重要となります。
まとめ
いかがでしたか?この記事では不動産投資において融資を活用することのメリット、デメリットを解説しました。加えて、特に会社員&初心者の方が融資を活用する際の注意点を示しました。
融資は上手く活用すれば不動産投資における最高のパートナーとなります。この記事を読んでメリットやデメリットを理解し、物件購入に役立てて頂ければ幸いです。